地球ドライブのノウハウ(1)目的


■目的達成の喜びとその代償

  目的をしっかり確立する。あとは種々の能力と情熱で左右される。「旅を継続する必然性がどの程度
 強いか」と「旅行前と旅行中に発生する問題等」のどちらが優勢かは、旅の命運にかかわる。目的が中
 途半端では、数々の難題が発生したときにギブアップを余儀なくされるだろう。

  苦難の多いこの種の旅は、宇宙へのロケット打ち上げに似ている。あらゆる種類の推進力が強力な引
 力に勝てば宇宙に行けるが、何らかの不足は失敗に帰する。日常の人生観、問題意識、資金作り等の事
 前の努力や苦労等が後に生きてくるのであり、この旅行前の苦労が旅行中の苦労を上回っていれば、た
 いていは乗り越えられる。旅では必ず多くの難題が発生するが、目的がしっかりしていれば、多くの苦
 労も乗り越えられ、目的を達成しやすい。

  ほとんどが衣食住や将来不安に振り回される人生。定住して定職につき、人間の本来の原始的な姿か
 らは遊離してしまった一生。でも、ときには原始的な人間に戻ってみたいではないか。人間、衣食住が
 ある程度満たされたら、次は何をめざすのだろうか。その点、知的欲求は手応え十分である。人生は1
 度しかなく大切にしなければならないし、このようなことに挑戦する機会は一生を通して少ない。感受
 性が鈍くなった老年の旅では、それなりのものしか得られない。それなのに、事前の資金づくりや情報
 収集等にそれほどのエネルギーを傾注していない人がいて、中途半端な結果に甘んじている人を散見す
 るが、もったいないと思う。

  同時に、例えば登山においての登頂。長年の念願であった、その登頂寸前に悪天候になり、最後の栄
 冠を断念する勇気等、論理的でクールな精神力も必要である。登頂には、元気でいれば再挑戦の機会も
 あるかもしれないし、人生はこれ以外にも色々あるのである。ある登山家は「登頂成功は100点満点か
 もしれないが、失敗してもそこに山があれば99点」という。

■地球ドライブは最高の知的ゲーム

  内容の濃い地球旅を追いつづけて、かつ長旅をすると、色々な局面に遭遇し、まるでスーパーマン的
 なあらゆる能力を要求される。孤独で資金難だと、よりしっかりしないと旅の満足度が下がり、頓挫さ
 えする。つくづくそう想う。悪条件下での健康管理、車のメカ知識、資金確保・管理、異性との付き合
 い方、世界史、経済、日本文化、日本人の特徴、地元民の日本人観に対する対応、気象観測、宗教観、
 世界の政治、哲学、動植物知識、国際的な礼儀作法、料理、スポーツ、語学、地理、心理学---等、そ
 のグレードが高ければ高いほど感動、満足感、挫折感、虚脱感---に満たされる。地球ドライブは最高
 の知的ゲームともいえる。

■地球にパワーポイントあり

  地球には人間の五感をゆさぶり、魂をよびさます所(パワーポイント)がある。それは人によりさま
 ざまで、また天候やその他の諸条件によって感じ方は天と地の差がある。

  ダーウィンは、アルゼンチンのペリト・モリノ氷河やエクアドルのガラパゴス諸島等の旅の29年後、
 その見聞と熟考から「種の起源」「進化論」等を発表し、人類に偉大なる貢献をした。「人間はアダム
 とイブから始まった」等とする絶対的な規範を押し付けるキリスト協会の猛反対や死刑も覚悟の上でだ
 った。

  マザーテレサは、インドのトイトレーン(玩具のような小型ダージリン鉄道)に乗っているとき「こ
 れまでの自分の生き方に疑問を抱き、見捨てられたような極貧の人々の救済に目覚めた」といっている。

  このような事例は数え切れないほどある。有名無名を問わなければ、無限にある。日本人は種々の目
 的で毎年1,700万人(2006年)も海外に出るようになったが、このような地球ドライブでは、視点さえし
 っかりもっていれば、偉人のような立派な人物はまだまだ輩出するだろう。

  一方、目的が「完走」だけとか限定されていれば、それほどの具備条件は不要だろう。少ないエネル
 ギーでより多くの満足を求めるか、余裕の旅かは本人次第である。

■刷込み現象発見(動物は生まれ育った環境・事象等に染まり、自意識がなければ気づかない)

  地球の旅を長くして、諸民族をつぶさに観察すると、オーストリア人の動物行動学者でノーベル賞受
 賞者のローレンツがいう鳥類の「刷込み現象」、ロシア人の生理学者パブロフがいう犬の「条件反射」
 は人にもいえると思う。

  人は生まれ育った家庭、学校、地域、会社、団体、国等の環境に、勉強したこと、感化されたこと、
 経験したこと---に圧倒的に支配され、自分は何色に染まっているかも客観的にはほぼわからず、一生
 をすごす。特に、宗教によって教え込まれた刷込み現象等は顕著である。イスラム教等のように唯一神
 で、他の宗教を認めない教義は、他の宗教への改宗は死刑になるので、刷込み現象等からは逃げられず、
 客観的な思考行脚は許されない。このような宗教下で産まれ育つと、一生この教義から抜けられず、他
 の世界はない。ほとんどの信者にとって、「刷込み現象から離れての人生観」を考える自由はないので
 ある。

  食事作法でも、手づかみで食べて育つと、それ以外はまずくて食べた気がしない。逆に箸やフォーク
 で育つと、手づかみに慣れるのは容易でない。

  無知な人生行脚は冒険人生である。旅には別の冒険要素があるものの、自分の色さがしの旅は冒険で
 はなく、より安全・安心な人生への必要不可欠な道程であると思う。白紙で自分と向き合える旅はいい。

■真理探求は、より幸福をもたらす

  真実を知りたいのは、人間の自然な欲求である。数百年前にアフリカで産まれ、やがて地球上に拡散
 し、一部は南米最南端の島:ティエラ・デル・フエゴまでいってしまった人類。なぜ拡散するのだろう
 か。現在は月や宇宙にまで飛び立って、将来は現代人が想像を絶するひろがりをもつだろう。これは人
 がもつDNAのなせる業かもしれない。人のDNAはその永い経歴と共に”刷込まれ”数百万年かかっ
 て培われてきた。幸福の追求、真理の探求、より良い生活、危険回避---で人の行動は人為的な障害が
 なければ際限のない広がりを宿命的にもっているのだろう。人のDNAの99.9---%は、地球に生命が
 誕生してから、とほうもなく永い間に培ってきて、DNAにしっかり組み込まれた本能だろう。さらに
 人類誕生から近現代までの、人類史の大半を占める「類人猿や石器時代の非定住型生活で刷込まれたも
 の」がわれわれのDNA=本能であろう。

  現代人は仕事や居住地、村や国境等、やむをえない理由で定住生活を余儀なくされているが、これは
 本来の(自由な)姿ではない。地球ドライブという真理探求等の旅は、まさに人のDNAが欲している
 人間の原点の旅なのだろう。

  人はマスコミ、本、宗教、自然、経験等で得た真実を精神のよりどころとして生きている。しかし、
 何らかの事情で前に得た真実を他から否定され、新たな真実を突きつけられると、精神がゆらいでしま
 う。特に勉強不足だとたびたびこれが起こり、そのつど精神が混乱し、なにを信じてよいか、何を規範
 にしてよいか不安になる。ひどいときはすべてに懐疑的になる。

  誰もが生活を通して一生、真実をさがしているが、積極的に真実さがしをする人もいる。定住して普
 通の生活のみでは真理の探求機会が限られるので、例え困難があっても、自分でつかむ真理を求めてこ
 の種の旅にでる。それは、普通の生活より幸福感が多いからだ。地球ドライブはそんな旅である。

■比較対象・視点の多寡は真実度を左右する

  ものごとを見るとき、ものごとを考えるとき、ものごとの価値基準を決めるとき---比較対象が多け
 れば多いほど一般的には真実度が増す。視点が多角的なほど真実味が増す。地球ドライブはその比較対
 象を確実に増し、視点を多角的にする。多くの風景に接し、多くの家庭に滞在して異民族と言葉を交わ
 し、多くの考え方を披瀝されると「日本での常識は、一定の条件下での、一つの考え方にすぎない」と
 いうことがわかる。

  1945〜1989年の日本の経済的な躍進はめざましかったが、一般的な日本人、しかも経済人でも、それ
 を明確に解明できないのである。これでは現在の日本経済もわからず、将来予測はさらに無理である。
 少なくとも私が見聞した限りではそうである。オーム真理教、振り込め詐欺、少子化、日本人の思考特
 徴、日本経済のパラダイム、日本社会の変遷予測、人類の共通反応、人類社会の変化---長期の地球ドラ
 イブはいろいろなことを考えさせてくれ、明快な解答を与えてくれる。特に、必然的にじっくり考える
 環境が整う単独はいい。(勿論、客観性の欠如---等、単独の弱点はあるが)

■地球ドライブを長年すると人間社会の変化・無変化、その長所・短所等が多少わかる

  地球を広く、長く見聞すると、ある程度の現状把握ができる。旅立ち前から数十年経過し、かつての
 地球の人間社会の姿と現状を比較すると、その変化と無変化、そしてそれぞれの長所と短所が顕著にわ
 かる。ここではすべてに言及できないので、問題は日本人にとって何が喫緊の課題かである。人間は豊
 さを求めて日夜努力してきたが、もたらした変化の良い・悪い・どちらともいえない・無関係な現象が
 ある。

  一つは「良い変化」と表裏一体な悪い現象である。「乳幼児死亡の減少や種痘の絶滅宣言等、衛生・
 栄養状態の改善」「安全、安心な社会の構築」「苦役・努力からの解放」「人生選択肢の増加」「人権
 擁護の普遍的拡大」「寿命の伸長」「餓死者の減少」「老後の生活保障」「あらゆる人間活動への開花」
 「因習の打破」---等、良い変化は素直に喜びたい。しかし、新たな難問を生んでいる。

  @ 結婚者の減少
  A 出生率の低下
  B 年金制度破綻の危機
  C 緊張感の欠如、切れやすい、甘えの増長、軽薄な判断、自立困難、犯罪増加
  D 生活レベル低下への不安
  E 肥満の増加
  F 欲望の甘い制御(酒、性、金、砂糖、肉、脂肪、麻薬、運動、車、自己主張・表現、賭博---)
  G 油断体質、無計画・無軌道人生
  H 24時間の日常生活サイクルの激変
  I 既成概念の頻繁な崩壊による混乱、新環境への適応不十分

  これらは、定住生活で日々雑務に追われていると本質を察知しにくいが、大切な課題である。

  奴隷時代は終わったのに、新たな奴隷が発生している。 ”自分は○○の奴隷である”と認識してい
 る人は例外で砂糖、アルコール、肉、蛋白質、車等の利器、パソコン、薬物---は新たな奴隷を生み、肥
 満、健康障害、精神異常、不健康体質、引きこもり、自立阻害---をもたらしている。

  「無変化」から一つあげれば、「日本人は12歳」からさほど成長していない悪い体質である。これに
 気づいていない人が大半である。近代民主主義国家やグレードの高い社会を支える市民としての質の低
 さは相変わらずで、国連の常任理事国立候補はまだまだ早い。人間の特性として「経験しないと勉強・
 学習できない」ということで、国政に関与しての経験は明治以後、本格的には戦後初めて、と日が浅く、
 賢い日本国運営には問題が多い。ましてや他国民のリーダー役はおこがましい。

  戦後、占領軍の総司令官マッカーサーは、「日本人は12歳である」と、酷評した。欧米人や欧米民主
 主義の政治・社会性等と比較してのグレードの低さを指摘した。当時も、今でも、同感の人は多いと思
 う。極東の離れ小島の情報鎖国村に住む日本人。鎖国時代に士農工商等で徹底的に「個人の国家運営能
 力を去勢」されてしまった村人は、熾烈化する国際政治・経済戦争下でどのような戦略・戦術で生きて
 行こうとしているのか。教育基本法改正はこのような視点が欠かせないのに、愛国心一本槍。国民の質
 の向上には無頓着で、先の大戦前のような疲弊した国状や、世界に迷惑をかけるような事態を再現して
 はならない。

■地球ドライブからは「日本経済はどうして成り立っているか」がわかる

  海外で長期間「日本経済はどのように成り立っているか」を熟考していると、日本経済の過去・現在・
 未来が見えてくる。武力が支配した第2次世界大戦が終わり、世界は新たに国際経済戦争に突入した。
 軍需物資、原油、食料、植物、気候、希少金属、情報---経済に結びつくあらゆるものが経済戦争の対象
 になっている。

  日本の戦後の繁栄は「国内に産業の基盤があった」「東西冷戦下で戦勝国の庇護があった」「世界の
 大半は植民地や戦禍で疲弊し、国際貿易にまで手が回らず、日本の競争相手が希薄だった」---からドイ
 ツとともに勝組になれたのである。中国、インド---のほとんどの国は、植民地や戦禍に蹂躙され、この
 間、まともな自立さえままならなかったのである。これは、島国内にいてはわかりにくい真実である。
 しかし、開発途上国といわれた国々は徐々にインフラを整え、いまでは第2次産業を中心として大躍進
 を果たしている。今は国際経済戦争真っ只中である。ほとんどの日本人はこの認識がない。このような
 基本事項を認識していると、株等の投資も有利に働く。

■人々の最も「平均幸福度」が高い国はどこか、幸福度のバラツキが少ない国はどこか

  一人当りのGDPや土地の気候等、人間の究極の目標である幸福度は、国・人によってさまざまであ
 る。どの国・人も単に物質的な豊さだけが幸福度の尺度ではないし、幸福度はじつに多様である。皆さ
 んが考える「天国に一番近い国はどこだろうか」「天国に一番近い所に住んでいる人々は誰だろうか」。
 ある団体の評価によれば、南太平洋のバヌアツ共和国というが---!?

■島国人(日本人)は、他国と国境を接している国より世界の動きを予測しにくい

  太平洋戦争開始でも明らかなように、世界を読めない大半の島国日本人は、一部の過激なリーダーに
 従うしか方法がなく、結果的に大きな過ちをおかしやすい。地球ドライブは海外から日本を眺め、日本
 の長所や短所を熟考するのに最適である。

■長期の地球ドライブは「自分とはどんな人間か」がわかる

  通常の生活では、比較的平凡・無風な経験しか体験できず、難題や際立った極限状態で自分というも
 のを繰り返し試されないため、自分はどのような人間か、どこまでできるか等は、気づく機会が少ない。
 ほとんどの人は自分さえ知らずに一生を閉じる。

  しかし、この種の旅はまさに波乱万丈で自分の力量、勇気、忍耐力、注意深さ----等をイヤというほ
 ど試され、知らされる。そして、自分という人間を十分理解すれば、その後の人生に大いに参考になる
 だろう。

■長年、広い世界(110か国)を見聞して古い過去(1969年)と現在を比較すると、地球の激変とその影
 響に気づき、現状把握と未来予測ができる。

  カエルを入れた洗面器の水を下からゆっくり熱してゆくと、カエルは温度変化に気づかない。熱いと
 気づいたときは手遅れで、逃げる能力を失っているという。人間もまたしかりである。ほとんどの人間
 は「ささいな変化は気に留めず、今日も明日も過去と似たような人間・社会」と勘違いし、時代から取
 り残されている。ほとんどの人は気づかないが、人類史上初めて数億人は悲願だった夢に到達した。

  @ 豊かになった。

     将来の、老後の不安も激減した。慣習的なお見合い結婚→出産は激減---。

  A 自由になった。

     男女平等、人権、発言、移動、職業選択、信仰、選挙権---。

  B 空前の科学技術の進歩があった。
  
     人・物・金・情報等の大量・高速・安価な地球規模移動、医療・通信・教育・気象観測---。

   これらのすべての変化を享受している数億人は、どのような自己表現・主張で、どのような家庭・
  職業・人生を選択しているか。これが地域・社会・国・世界にどのような影響を与えているか。

   また、@〜Bの一部の激変を享受できた数十億人は、同様にどうように変化しているのか。主に先
  進国で気づいた一部の詳細は事項に記す。

■グローバル化対策

  すべてがグローバル化し、そのスピードが格段に速くなっているので地球を知らずして生き抜けない。
 特に先進国や天然資源国等の政治、経済、ビジネスモデル、気象、トレンド、環境---動向は我々の生活
 に即座に直結するようになり、看過できない。今や地球の現状と未来予測をあらゆる手立てで日常的に
 取り入れる必要がある。それには地球ドライブは良い手段である。

■長期間の地球ドライブで先進国を垣間見ると、日本社会の現状把握と近未来が少し予測できる

  1969年、先進国のヨーロッパ諸国を見ての感想は---人・物・金・情報・技術等が大量・高速・安価に
 地球をかけめぐる時代が到来し、”島国・単一民族・士農工商階級社会・鎖国・稲作文化・村社会”等
 の日本の常識は急速に世界の常識に変わって行くと感じた。よく象徴的にいわれる「タダだった水と空
 気と安全が有料になる」という以外に、無防備な村社会から世界並みの危険な社会等へ、あらゆる面で
 欧米化してゆく。家屋の施錠化、インチキ商売・カルト教・犯罪等の蔓延等々、事実はそうなった。以
 下に”日本や世界、物事はそうなるだろう”と予感していたら”その後「ずばり的中した」具体例を記
 す。井の中の蛙で、地球規模の真実とは程遠い限定された情報に翻弄されていては、物事を客観的に見
 られない。

  ・1969年、ベルギーで一般消費者向け卸売りビジネスを見て、日本も---。

   最終消費者への卸売りは少しずつ増えている。貯蔵量が限られている狭い住居、どこにでもある商
   店でいつでも入手できる、ヨーロッパと違ってストライキや災害等で社会がストップする例が少な
   い等の理由で広がりは今一つだが、増えている。世界は確実にそうなっている。

  ・1969年、ベルギーでビアージュ(仏語。売主は所有不動産を担保に契約金を年・月毎にもらい、所
   有者死後は購入者に登記移転する契約・ビジネス)取引を見て、日本も---。

   日本でも少子化と、親は自分の財産は自分で使い果たし、子孫等には相続しない思想が強まると思
   われるので、早晩採り入れるだろう。東京都武蔵野市他がリバースモゲージ(長期生活支援資金貸
   付事業)と称して多くの役所や銀行等で採用し、急拡大中。

  ・1969年、ベルギーでは旧植民地のコンゴ等からの人がベルギー人と偽装結婚して国籍を取れば生活
   が楽になるのではやっていた。日本も---。

   豊かな国の国籍取得はより良い生活をめざす人の昔からの知恵であり、日本も豊かになれば合法・
   非合法結婚はやるだろう。2003年は20組に1組は国際結婚である。

  ・1969年、フランス等で少子化減少を見て、日本も---。

   豊かになり、より自由になれば人生の選択肢は無限にひろがり、教育費の高騰(人はわが子に自分
   たち以上の教育や生活レベルを望みがち)等で、選択肢に余地が少なかった時代の子育人生より、
   別の自己表現・実現を望むようになる。男女平等や人権の尊重、老後の年金等の保障、医療技術の
   向上もあり先進国では少子化に拍車がかかった。出生率減少(1945年頃の4.5が1.2へ)は社会のあ
   らゆる面に深刻な影響を与えるだろう。産院・学校等減少、税収・年金制度危機、結婚数・結婚式
   場・婚礼産業減少、離婚率増加、単身者増加、外国人の流入、日本文化のアジア化---。

  ・1969年、イギリスで、苦労して豊かな社会(大英帝国等の)を築いた経験がない若者等の増加を見
   て、日本も---。

   ”当たり前の豊かな生活”はないのに、やがて豊かさに慣れ・油断・驕り等から経済・社会等が衰
   退するのではないか、日本も同じプロセスをたどるのではないか。WTOの基で国際市場に開発途
   上国が怒涛のごとく参入し、経済の分業化は熾烈を極め、次世代の飯の種を模索していないかつて
   の先進国の1〜2次産業は壊滅的打撃を被っている。人間の本性を見る思いがする。

  ・1970年、ギリシャの国境警備兵が民族衣装をまとって観光客に笑顔をふりまいているのを見て、日
   本も---。

   外貨獲得に観光政策は世界の常識で、日本も無視できないだろう。昭和41年に立教大学に観光学
   科が創設されてから2006年現在では9大学に過ぎず、政府も2000年に入ってからやっとPRしはじめ
   た。ギリシャやペルー等では昔から基幹産業化されているのに、日本国民の理解はまだまだの段階
   である。

  ・1970年、旧ソ連やブルガリア等の共産圏で、やる気がまったくない給油所等の店員の態度を見て、
   大規模な共産主義を長期間続けるのは無理だろう、と見ていたら、やはり、

   共産システムは人間の本性にマッチせず、やがて非効率的・非生産的なシステムは潰れるのではな
   いか。案の定、旧ソ連の共産主義実験は74年間で幕を閉じ1991年に崩壊。中国もベトナムも実質は
   資本・自由主義に傾倒してきた。

  ・1970年、アメリカのサンフランシスコ市では駐車場が確保できず、百貨店が郊外に追いやられたの
   を見て、都市の終末状況を見て、日本も---。

   車社会を加速させている日本も同じ状況になるだろう。スーパーストアーの展開もあるが、都会か
   ら大手百貨店が続々撤退した。東京都をはじめとして大都市は機能不全になりつつある。

  ・1970年、アメリカのギルロイ市の図書館で働く多くのボランテア活動員を見て、日本も---。

   日本もやがてボランテア、NPO、NGO等が社会的な位置付けの基に応分の役割を担い、広く活
   躍するだろう。成熟社会は全員参加の社会であり、今後も増えるだろう。

  ・1970年、アメリカのサンホセ市の写真現像所で、東京銀行を辞めて入社してきた人を見て、銀行員
   よりゴミ収集員の方が高級取りだと聞いて、世の中は労働の対価に応じて遇されるだろうと見てい
   たら、そうなった。

   先進国の銀行の社会的地位は、護送船団方式で守られている日本より低く、早晩護送船団方式は解
   除され、銀行業務も自由化されて自然淘汰が図られ、一般会社の地位になるだろう。1977年のオー
   ストラリアでは、銀行員よりゴミ収集人やタクシー運転手の方が高給取で社会的地位が高かった。

  ・1970年、アメリカのサリナス市の花栽培業者がメキシコやコロンビア等で栽培し、飛行機で輸入・
   卸をしているのを見て、経済の原則の普遍化は加速されるだろうと見ていたら、そうなった。

   生産は原価が安い海外に広がるだろう。国際運搬が容易になり費用が安くなれば生産・製造・流通
   は地球規模になるだろう。いまや1〜2次産業の産品は、かつての開発途上国の花形産業である。
   国内分業は国際分業になり、外国と競争しなくてすんだ製造業等の第2次産業国内は、格段に変貌
   をとげるだろう。

    南半球の夏は北半球では冬。航空運賃が安くなり、オーストラリア人等は避暑として北海道にス
   キーにおしかけ、今や常態化している。おかげで北海道のスキー場界隈の土地は2005年に30%も値
   上りした。

    国内の歯医者に数百万円払って入れ歯等の治療をするよりも、往復の航空券代数万円を払っても
   費用が安く同等の治療をしてくれる先進医療国に人々はシフトしてゆくだろう。

  ・1971年、ベネゼエラでオイル産出による急激な社会変化で貧富の格差等による混乱を見て、これは
   人類共通の現象だろう、と見ていたら、そうなっていた。

   社会が急変するとスムースな対応ができないのだろう。オイル産出による混乱状況は1975年のナイ
   ジェリアも同様だったが、国の発展段階が似た状況下では、人間みな同じような混乱を引き起こす
   ものだと思った。泥棒の闊歩、近代的なビル前での物乞い、汚職、成金の登場、内戦---。

  ・1971年、アメリカの豊かさ・高カロリー食品の過剰摂取・車社会での運動不要社会・ストレス増大
   等による異常な肥満を見て、世界がそうなるだろうと見ていたら、そうなった。

   日本も間違いなく肥満問題は社会問題化するだろう。中国でもインドでも肥満問題がはじまった。

  ・1971年、アメリカで多くの企業合併・買収を見て、日本も---。

   日本も増えるだろう。それが発生して、はじめは混乱が生じ、やがて関連法も改正・整備されるだ
   ろう。

  ・1975年、ナイジェリアの新港建設の国際入札に日本の企業が失敗したのを聞いて、国際ビジネスは
   一企業からグループや国の支援で、また国々の協力で熾烈になるだろうと見ていたら、

   落札勝者である他社は、企業連合や国支援の企業体であり、過去の多くの勝因・敗因を活かしてい
   るが、日本の個々の企業単位では経験数が少なくて次の商談に結びつけにくい。今後はますます企
   業連合や国の関与が増えるだろう。情勢は確実にその方向に向かっている。

  ・1976年、イランで大多数の貧しい・イスラム教徒・田舎人とオイル産出に潤う都会の一部の特権階
   級、特に元パーレビ王の対米親交方針との乖離を見て、危ないぞ---と見ていたら、

   豊かさや自由度が増し非イスラム化する一部の特権階級と、富の恩恵に浴せず貧しいイスラム教信
   仰に救いを求める大多数のイラン人を見ると、「この国はひっくり返るかもしれない」と思った。
   日本のマスコミは元イラン政府の広報以外はまず報じなかったから、革命予測は皆無だった。政権
   転覆時はあわてふためいてドラスチックに報じた。お粗末。

  ・1976年、貧しいパキスタンやインドといえども、銀行に銃を持った警備人がいるのを見て、日本も
   ---。

   島国、準単一民族、村社会、士農工商の身分固定制度---の性善説を前提とした、水と安全はタダな
   社会から、国際標準の性悪説を前提にした社会になり、すべてを警護するようになるだろう。

  ・1977年、オーストラリアの多くの原住民が昼間からアルコールでつぶれているのを見て、人類は皆
   同じである、と感じた。

   アメリカやカナダのイヌイット(エスキモー)も政府の各種補償・保障費で麻薬のアルコールに溺
   れ肥満が激増した。人間、突然、お金を与えられて労働不要の生活におかれアルコールを目前にす
   れば、同じように泥酔して混乱する者多し、と思った。土地成金が人生を狂わすのと似ている。

  ・1978年、”安価”という超強力な武器を手に国際市場に登場してきた東南アジア諸国を見て、日本
   人は気づかないだろうと見ていたら、

   長い間経済が好調で勝組に属し、慣れ、油断し、驕り---国際市場で次の飯の種を模索しないできた
   日本は危ない!と思っていたら、案の定、1〜2次産業の国際競争力は地に落ち、国内は産業空洞
   化が常態化した。私が帰国した1978年後も1989年まではバブルが続いたが、警鐘を鳴らしていた一
   人として大いに落胆している。日本を経営した経験が乏しい日本人は、まさに元マッカーサー元帥
   が嘆いたように政治・経済・社会的に”12歳”で、お先が暗い。国民が未来の青写真を描けないか
   ら政治家にも要求せず。「百年、河清を待つ」の感あり。

  ・1978年、韓国と北朝鮮との国境にある板門店を見て、独裁者の非科学性はいずれ破綻するだろうと
   見ていたら、

   北の独裁者はイエスマンのみを周囲にはべらし、これでは国家運営が非科学的、非効率的に陥って
   危うくなる、と思っていたら、そのとおり。日本企業の独裁者も同じで、やがて自然淘汰されるだ
   ろうと見ていたら、そごう、ダイエー等が倒産。独裁者に陥りがちな慢心を反省し、親族に継がせ
   なかった江戸時代の三越百貨店等の老舗創業者は、科学者だった。

  ・1978年、9年ぶりに帰国して、天然資源に乏しい日本では豊かな人的資源や水資源を活かした企業が
   国際競争力をつけて生き残れるか、と見ていたら、

   自動車産業等、時流に合った産業で世界戦略に秀でた企業が生き残った。

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