■新車か中古車か 資金に余裕があれば新車がよい。カルネの保険料等は高いが、ドライブ中の故障で多大なエネルギー を奪われなくて済む。旅にトラブルはつきものだが、少しでも無用な苦労は除去すべきである。資金不 足なら選択の余地がなく、中古で生じるあらゆる事態に奮闘しなければならない。 ■車種 ○基本事項 頑丈、物の運搬能力、メンテナンスサービス網、部品が調達可能、ある程度自分で修理できる車が よい。目的、目的地への経路、ドライブ季節、旅行期間、メンバー数、予算、旅に対する基本姿勢等 により決める。 ○世界の実情 数の多い順に記すとVWバン、英国のランドローバー(レンジローバー)。その他の順序は不明だ が、各国のバンタイプ車、米国のフォードトランジット、トヨタのランドクルーザー、仏国のシトロ エンの普通乗用車、VWのビートル、大型トラック、各国の普通乗用車、独国のメルセデスベンツの ユニモック、大型キャンピングカー、牽引式キャンピングカー。 ○車の故障 車の故障が心配。もちろんメカに詳しいことは心配の種を少なくし、危険のいくつかを回避できる。 だが、本人の性格にもよるが、メカにはまったく弱い人が結構ドライブしている。女性、高齢者---。 毎日の始業点検、車をいたわる運転、先進国の大都市での早目の事前点検、故障時の対応を事前に考 えておく(ある町から別の町の間で故障したら、どうするか等)、最低限の部品の持参、各国語によ る部品リストと修理マニュアルの携帯等を考慮していれば、地球は恐くない。インターネット、Eメ ール、国際電話、携帯電話等の活用で昔より格段に楽に、安全になっている。 ■車体の外面の表現 ○言葉や地図等で表現する。 o長所 旅の目的等をアピールし、記念ステッカー貼付等はマスコミや住民とのコミュニケーションに多 いに役立つ。「テレビ、ラジオで話しを聞かせろ」「新聞、雑誌に記事を載せたい」「家にきて話 しを聞かせてくれ」「風呂に入っていけ」「行く先の友人を紹介するから寄ってみたら。何かの助 けになるかもしれない」「特別に○○史跡を見せてやる」---のありがたい誘いが得やすい。車の素 性が理解しやすいので国境役人、警察、軍人、住民等に怪しまれる確率が低くなる。悪徳役人も車 にサインさせると途端に相好を崩して親切になることがある。 私はブラジルでサッカーの神様といわれる”ペレ”に、現役時代右ドア―にサインをしてもらっ たので、その後さまざまな上記のようなご利益を得たし、石油危機でガソリンの入手が困難になっ たときもこのサインのおかげで各国で給油を受けられた。 o短所 静かな旅ができない。インド等では数百人が車を取り囲んでしまい、飯も落ち着いて食えない。 目立ちすぎて周囲の人に翻弄されやすい。好奇の目にさらす。 ○表現しない。 o長所 静かな旅ができる。 o短所 マスコミや住民とのコミュニケーションは限られるから、旅のひろがりに欠ける。素性が不明だ から国境役人、警察、軍人、住民等に無用な警戒心を抱かせる。 ■設備(改造) ○基本事項 シンプルで便利に。複雑すぎたり多すぎると使い勝手が悪く、故障等で余計な神経・手間・金がか かる。 ○具体例 固定式と移動式の車内灯、移動式車内灯用兼洗濯物干用針金、堅固なベッド、カーペット、カーテ ン、整理棚、ルーフキャリア、ルーフキャリアの全面にまたは底に太陽熱と雨音遮断用キャンバス、 予備燃料・水タンク、水タンクを活用したシャワー設備、横ドアー側上方にサイドオーニング、悪路 やソフトサンド脱出用ハシゴ、フロントガラスとヘッドライトガラス防護用アクリル板、牽引用電動 ウインチと同設置場所、フロントバンパー前に大型動物衝突時の緩衝用鉄枠、車底ガード用鉄板・金 網、投光器、予備警笛、エアコン、カーラジオ、カセットプレーヤ−(CDは、非舗装道が多い国は 極度の振動とほこりで使えない)。冷蔵庫は電気をたくさん消費するので、慎重に。携帯型発電機は 料理用電子レンジ等に便利だが重い。盗難防止用ホイールロックやブザー設置。 ○電源 ノート型パソコン、冷蔵庫、電子レンジ、テレビ、室内照明等に電源の充実は欠かせない。そのた め予備バッテリー、インバーター、コンバーター、アイソレーター、過充電防止器、コントローラー、 内外コンセント、太陽電池パネル、ポータブル発電機等を準備するとよい。 ■主な部品(1968年型VWバン1600CCの場合) ○各種電球・ヒューズ・ボルト・スクリュー・ナット・ワッシャー・割れピン・ガスケット・スプリ ング・電気コード、エンジンオイル、グリス。 ○エンジンオーバーホール用ガスケット等一式、ピストンリング、エンジン冷却用オイルブリーザー スプリング、ファンベルト、ジェネレーターのナット・ブラシ・スプリング、イグニッションコイ ル、レギュレーター、バルブアジャスティングスクリュー、プッシュロッドカバー、プラグコード、 スパークプラグ、コンタクトポイント、コンデンサー、ローター、ディストリビューターキャップ 一式、ヒューエルポンプ一式、ヒューエルゴムパイプ、ヒューエルフィルター、シリンダー一式、 シリンダーゴムキャップ、オイルストレーナーのガスケット、キャブレターのダイアフラム、パイ ロットジェット、アクセレーターポンプ・ディスチャージ・チューブ、ブリーダーバルブ、エンジ ン取付用ボルト。 ○タイヤ、タイヤ取付用ボルト、ホイール、スタッドレスタイヤ、チューブレスタイヤ用バルブ。 ○バッテリー、バッテリー用液。 ○ヘッドライト等の各種ライトカバー。 ○ワイパー一式、グリス注入用ノズル、ブレーキドラム、ライニング、リベット、クラッチプレート、 クラッチケーブル、クラッチリリースベアリング、ショックアブソーバー、同用ゴム・ボルト・ナッ ト、リアーアクスルのボールベアリング等一式、トーションバー、サスペンション、タイロッド、ス テアリングバンパー、ボールジョイント、フロントアクスルのベアリング、スターターブラシ、スノ ーチェーン。 ■道工具 道工具箱一式、室内やエンジンルームの埃を吹き飛ばすブロアー。 ■タイヤ 一流品は品質がよいので高いが結局は安くつく。開発途上国製の安いのはすぐバーストする。アメリ カのリキャップド・タイヤ(再生品)は品質が良く使える。砂漠は、接地面積が広いラジアルタイヤが よい。凍結道や雪道にはスタッドレスタイヤやスパイクタイヤも必要で、1回の運転ミスで旅が頓挫す ることがあるので甘く見ないほうがよい。通常は、ホイールをつけた予備を3個以上備える。サハラ砂 漠等は5個以上。開発途上国は路上にクギやガラス破片等が多くパンクが多い。 ■予備燃料・オイル 燃料は、行く先の給油所がわかっている地は5リットル程度でよいが、給油所が少ない地方は、それ に応じてジェリカンやポリタンクに用意する。最大200リットル用意した。予備燃料の漏れ、爆発、臭 気、雨水の浸入等に注意する。エンジンオイルは普通用5リットル。粘土が固い酷暑地用も用意した。 ■車検 ○出発直前に、海外ドライブの理由を述べて、地元の陸運局の車検場で特例として前倒しの車検が受け られる。この車検証に旅券、自賠責保険証、印鑑を添えて申請すれば国際登録ナンバーが記された日 英語の登録証書が無料でもらえる。この登録証書は1949年の「道路交通に関するジュネーブ条約」に 定められており、車の旅券のようなもので有効期限はなく車検の有効期限が期限である。各国での車 の有効滞在期間は、ビザの有効期間と同じである。 ○帰国後は、国内の規則どおり2〜3年毎の検査証と自賠責保険の有効期限内で、運転免許証も有効な らすぐ走行できる。期限切れなら現住所の市町村役場で仮ナンバー取得・取付、現住所管轄の車検場 で車検と自賠責保険加入、運転免許証更新等を済ませなければ走行できない。 ■登録証書 ○登録証書は海外での車検証。車検証、旅券、自賠責保険証、印鑑を持って地元の車検場にゆき、 「REGISTRATION CERTICICATE」という日英語のハガキ大のピンク証書=登録証書を1枚取得する。 地方によっては手書き、平成表記、有効期限なしのもある(東京)らしく、外国では問題になること がある。できれば登録証書は印刷物かパソコン等で記したもの、西暦で表記したもの、有効期限があ るものを、あらかじめ車検場で申し出てしっかりしたものを携帯した方がよい。(2007年、私は国土 交通省に「手書きはなくして、車検の期限まで有効に」と改定を申し込んだら、お堅い役所から「時 間はかかるがその方向でゆきたい」との言質をとった) ○英国等の車は”ナンバープレートと登録証が、そのまま無期限に世界中で使える”という。長期間の 旅は、「英国で住所をつくり、車を購入し、カルネを取る」のも一考に値すると思う。 ○私はベルギーで住所をつくり、輸出用車を買い(消費税や物品税はなし)、車検も国際登録の更新も せず9年間6大陸を走った。ドイツも同様だと思う。 ■国際ナンバープレート oカルネ申請時に登録証書を添えて日本自動車連盟(JAF)に申請すればよい。日本からロシア→ヨ ーロッパ→北アフリカへと日本のナンバープレートで走った人もいるが、国際条約違反である。 o1年後以降の更新時は登録証書が不要でナンバープレートは変わらない。 ■カルネなしで出かける場合(ロシア、ヨーロッパ、北中米等) A.車検が有効な期間内で、1年未満に国内に戻る予定の場合 @日本語とアルファベットで表記した葉書大のピンクの「自動車の登録証書」を発行してもらう。こ れには車検証、旅券、国内・国際自動車運転免許証、自賠責保険加入証書、認印を持参して申請書 に記入し、受領する。ほとんどは手書きになるが、外国では「手書きは疑われて問題化することが 多い」ので、なんとかパソコンかタイプライター等で表記してもらうこと。平成表記は西暦表記に、 有効期限なしは有効期限の表記をお願いする。 東京都北区在住者の自家用車の例では、国土交通省関東運輸局東京陸運支局練馬自動車検査登録事 務所(〒179-0081 東京都練馬区北町2丁目8番6号、音声案内電話050-5540-2032)。 A車の船便を船会社で予約する。 B自分で通関する以外は、積出港界隈の輸送・通関業者に通関手続を依頼し、以後の手続は洗車、燃 料抜き、国内・国際ナンバープレートの交換装着、輸出申告書(様式C−5010)記入等、すべて指 示どおりにする。((39-2)日本出発前の船便探し参照) C通関業者の指示どおり、積出港を管轄する税関の保税蔵置場にいったん車を預ける。(新潟税関: 025−244−9312) D船積み。 E帰国時は船会社等の指示で通関する。 B.車検が有効な期間内で、1年を超えてから国内に戻る予定の場合(便法あり!) @自動車検査登録事務所では、自動車の登録を抹消するため「輸出抹消仮登録証明書」を発行する。 これにより、車の登録はなくなり、あとは輸入国の規則に従うことになる。 A帰国時は単なる輸入車になり、船会社等の指示で繁雑な通関手続をし、種々の税金を払い、自賠責 保険に加入し、車検を受けて登録するまで道路は走れない。 B東京都の場合、区民事務所では、Aの無登録車に仮ナンバーを発行し、これを付けて車をドライブ して修理工場等に持ち込み車検を受けられる。仮ナンバー申請には期限切れ車検証、有効な自賠責 保険証(期限切れの車検証を損保会社に示せば加入できる)、運転免許証、認印が必要で、有効期 間は1〜5日間で750円。有効期間延長も可。仮ナンバーは返却しなければならない。 ただし「海外ドライブは1年未満で終了して帰国する」と申告し、登録証書の期限が切れる前に車 は外国に置き本人が帰国してA@の書類を提出すれば、同じナンバーの登録証書が発行される。また は本人と車は外国にいながら、日本国内の親族・友人等に依頼して、この代理人が取得することもで きる。本人はA@の種類を書留等で日本の代理人に送付し、代理人はこのA@以外に代理人の認印が あればよい。ナンバープレートは変更しなくてよい。帰国時はAEと同じ。 C.車検が切れてから国内に戻る予定の場合 B.@ABと同じ。 D.カルネも自動車の登録証書をもらわず、そのまま日本車でロシア等へゆく場合 @日本の車検証やナンバープレートのままで実際にヨーロッパや北アフリカまで行った人もいる。し かし、これは国際条約に違反しており、通過国では種々のトラブルが予想される。一時刑務所収容、 車両没収、悪徳警官等に莫大な金をせびられる等を覚悟しなければならない。 A車検と自賠責保険が有効な内に帰国すれば、一時輸出時の処理に従って取扱われる。 B車検と自賠責保険が無効になってから帰国すると、B.Aの扱いになる。 ■燃費 通常は、1リットルで7km程度である。未舗装の砂漠、泥道、雪道、風道等、1〜3ギアーでしか 走れない道が長いときは、燃費も悪くなる。オクタン価の低い粗悪なガソリンしかない国も同様である。 ■車の手入れ 車は命なので、先手を打って予防措置を講ずること。”心をかすめた小さな不安、後でといわず今す ぐに”と、すぐ除去しておかないと、後悔することがある。毎日車体周り、タイヤの締めつけボルトの 緩み、エンジンルーム、ルーフキャリア等は点検し、万全を期すこと。旅の5大トラブルは健康・金・ 車・手続き・情報なので、安全できれいな車で少しでも問題を少なくして快適な旅をしたいものである。 ■車のトラブル例、修理能力 ○長期間になれば、車体の骨組みを除いてあらゆる部分が壊れる。実例から、壊れれた部分を頻度が 多い順に記す。 ○タイヤのパンクとバースト、ショックアブソーバーの緩衝ゴムとボルト破損、同本体の破損、スパー グプラグ磨耗、前後部の大小電球切れ、コンタクトポイント磨耗、コンデンサー不具合、ヒューズ溶 断、バッテリー寿命、ワイパーブレード破損、ワイパー駆動モーター破損、照明保護カバー破損、マ フラー破損、バックミラー破損・盗難。 ○1〜2度はイグニッションコイル破損、フロント・リアーアクスルのボールベアリング等一式磨耗、 トーションバー破損、サスペンション破損、タイロッド破損、ステアリングダンパー破損、ボールジ ョイント破損、エンジン冷却用オイルブリーザースプリング劣化、キャブレターのダイアフラム破損、 フォーン破損、三角窓ガラス破損、フロントガラス破損、エンジン割れ。 ○自分では、1度もベルト類を交換しなかった。 ○持参した部品と工具で直せる程度は、必修した方が安心できる。適度の通行者や車があれば、修理 工場まで牽引してもらうか、メカニックにきてもらえば修理できるが、特有の部品がない地域もあ るので、非汎用品で携帯可能な部品は極力用意する。 ○サハラ砂漠やオーストラリアの赤土道等を1か月以上も走ると、微細な粉塵がエンジンに入り、ピ ストンリングやカムシャフト等を磨耗し、燃費を悪くする。エンジンオイルもエンジン全体から漏 れてくる。アフリカやオーストラリアの非舗装道を3か月以上も走れば、エンジンのオーバーホー ルは必ずやらなければならないだろう。 ○日本国内に、自分の車のメカにくわしい人のEメール、電話、ファックス、携帯電話等の番号を知っ ていると心強い。 ○部品はすべてを運搬するわけにはゆかないので、海外のどこで調達できるか、日本の調達先のホー ムページ、部品番号一覧表、Eメール等を調べておくこと。 ■車の日記 ○車の調子(健康)は旅の成功に直結している。細心の注意と運転、タイムリーなメンテナンスで常に ベストなコンデションに保つには車専用の日記を、または日記の一部を車専用欄にするとよい。 ○毎日の始業点検等で気づいた点は、後の修理予定に組み込む。 ○タイヤ、オイルフィルター、エンジン潤滑オイル、トランスミッションオイル、バッテリー、ブレー キパッド、ショックアブソーバー、マフラー等の消耗品の交換実績と次回交換予定時期。 ○世界のポイント都市での全面点検、大修理予定と部品の調達方法。部品はあらかじめ日本から送付す るか、現地購入か。 ■車の積載量 極力軽くする。重量が重いとあらゆる部分の傷みが早まり、燃費が悪く、交通事故の恐れもある。1 週間〜数か月間も続く大きく波打ったコリゲーション道(洗濯板道)等は、車のすべてのパーツをバラ バラにするほど破壊力があり、足回りへの負担は過酷なものがある。私はスプーン1つの重量にも神経 を遣った。 ■外国で車を無税で購入 ○ヨーロッパで買うときは、輸出用として免税で買い、一定期間内に出国すればよい。仮に税込みで購 入しても、購入時に輸出用として免税手続きの用紙を発行してもらい、国境で申請すれば税金が還付 される。私はこの無税の車で約8年間も世界を回ることができた。登録証は登録期限なしだったが、 どこでも問題にはならなかった。どうせすぐ通過する観光客だからと、誰もとがめなかった。 ○米国で車を買うなら、中古車の方が名義書換だけで済むので、手続きが数日と早い。あとは登録証期 限の再手続きと保険加入で終わり。新車はナンバープレートが DEPARTMENT OF MOTORVIECLE から くるのに数か月間かかる。もし米国に友人がいれば、あらかじめ送金して車を友人名義で購入しても らい、自分が入国後、すぐに名義を書換え、保険加入をすれば効率がよい。 ■その他 ○車も二輪車も、衣食住と前進のみの旅に大半のエネルギーを費やすと「単なる路面観光」になりやす い。 ○乗用車、軽四輪駆動車、トラック、バス等で旅行し、宿は@安宿、A簡易テント、B車内という人も いる。