■資金は自分の金で ○基本は自分で稼いだ金にかぎる。資金作りに苦労したのと反比例して、感動や思い出等が生まれる。 短所は時間がかかり、出発まで待ちきれない、燃え上がった情熱が出発まで持続できず、その間に種 々の事情で失せてしまいやすいことである。忍耐強い人は、充実した旅が実現し、その後の人生にも 種々の意味で大きな報酬がある。中途半端な人は、それなりの旅しかできず、それなりの人生しか望 めないだろう。 ○借金は一見手軽いが、後日の返済には相当の苦痛を伴う。旅行後の資金稼ぎは甘くない。借金の額に もよるが、あくまで十分に返済可能な範囲にとどめるべきである。 ○私は自分で貯めた資金以外に、世界の6か国の11つの職場で千数百万円稼いだが、時代は変わった。 1960〜70年代はニューヨーク等で皿洗いをして100万円以上貯め、世界を二輪車でツーリン グしたり、ヒッチハイクした人が少なくなかった。今日は、稼ぐならあらゆる面で日本が1番である。 ○私の「旅しながら働く。働きながら旅する」スタイルは世界的に認知されてきた。「旅行しながら各 国で時々働く」というワーキングホリデー方式は、日本と9か国が提携している(2007年)。英、豪、 カナダ、韓国、ドイツ、フランス、ニュージーランド、アイルランド、デンマークは相互に「限定さ れた期間は働けて、旅ができる」ビザの協定を結んでいる。各国の雇用者が求める条件を調べ、あら かじめ準備しておけば活用できる。これまで世界旅行とは無縁だった開発途上国の人々にも、意志あ る人にはこの手で世界を見聞して欲しいと願っている。(社)日本ワーキング・ホリデー協会(電話 03−3389−0181) http://www.jawhm.or.jp/index.html ○旅の資金不足はスポンサーを探して---、は容易ではない。いまどきは、よほどの企画がなければ誰も 聞く耳を持ってくれないだろう。 ■日本円 先進国の大都市以外では使えず、またアジアの中都市以外でも使えないので不向きである。 ■米ドル 世界の基軸通貨であり、どこでも両替できるし貨幣価値が安定しているのでベスト。 ■ユーロ 米ドルに次いで世界中で利便性が向上している。 ■持参するお金 ある程度の米ドルの現金・旅行小切手、キャッシュカード、クレジットカードが便利。 ■米ドル現金 ○世界で最も貨幣価値が安定していて、どこでも両替できるし、そのまま使える所も多い。 ○米ドルは金額が変わっても色は同じで、偽札がよく出回っているので、信頼できる両替所や銀行以外 で受け取るときはよくチェックしたい。 ■TC(トラベラーズチェック=旅行小切手は盗難・紛失・破損等で再発行可) ○発行してもらったらすぐ、旅券にサインした字体と同じように1か所にサインする。盗難等で再発行の ために少なくとも額面ごとに最初と最終部分を複写して保管しておくと心強い。 ○再発行時の手続き @ 盗難等は最寄りの警察に行って盗難状況等を話して「盗難証明書」をもらう。 A 旅行小切手発行会社の支店等にいって事情を説明し@に旅券、購入時の控え(購入場所・日、額 面毎の連番・数量・合計金額)、紛失額面毎の連番・数量・合計金額、手元に残った旅行小切手 の額面毎の連番・数量・合計金額を添えて再発行を申請する。 ○南米では、盗難等での再発行は難しい。特に闇の流通ルートがあるペルーでは、盗難に遭ったTCはサ インが偽装され、すぐに現金化されてしまう。よって紛失や盗難にあっても再発行ができるというメ リットが薄い。 ○TCは主にトーマスクック、シティコープ、アメリカンエキスプレス(アメックス)等で発行されてい る。それぞれ特徴があるので長所をうまく利用しよう。リスクを分散する意味でも複数種類のTCを用 意して行くべきである。日本の銀行等は認知度が低く、開発途上国の、しかも田舎では両替や再発行 ができない。 ○トーマスクック:マスターやビザのマークが入ったTC。日本では地方都市の外国為替銀行でも扱って いるので入手は簡単。 ○アメックス :各国にあるアメックスの店では手数料なしで現金化できる。千米ドル札もあり、各 国で小額札にもできる。ただ首都以外は店がどこにでもあるわけではない。銀行や 両替屋でも現金化できることが多いが、手数料はとられる。南米では再発行が他の TCに比べ難しい傾向にある。 ○シティコープ :日本では大都市にしか店がなく、地方では購入しにくいが世界での使用価値は抜群。 私はイランで盗難に遭い、千ドルまではすぐ再発行できたが、千ドルを超えた金は 支店・本店との猛烈直談判、手紙、電話、テレックス等のあらゆる手を尽くしても、 2か月以上かかった。各社とも同じかな?その間は現金紛失と同然の心境・痛みで 体調さえ壊した。 ○アフリカ等ではATMが少ないのでTCを現金化するが、手数料はガボンで15%。TCは主に先進国向け、 と理解しておこう。 ■キャッシュカード ○国際金融機関が相互に利便性を図っているネットワークは主に「PLUS=プラス」と「CIRRUS=シーラ ス」の2つ。一般にプラスはビザのATMと、シーラスはマスターカードのATMとリンクしている。数が 圧倒的に多いのはプラス対応のATM。金融機関によって両ネットワークの使用可否は異なる。 ○日本国内の銀行の日本円の普通預金口座から、現地のATMで現地通貨を引き出すならシティバンク、 東京三菱UFJ、三井住友、みずほ、新生等の銀行やJTBで「国際キァッシュカード」や「ワールドキャ ッシュカード」を作って持参するとよい。プラスとシーラスの両方のATMでおろせる。変動相場制。 ○日本国内の銀行の米ドルの普通預金口座から、現地のATMで米ドルを引き出すならシティバンク(シー ラス、その他)やソニー銀行(PULSE、シーラス、マエストロ、ニース、チェースのみ)等で「専用キ ャッシュカード」を持参するとよい。シティバンクの場合1米ドルに対して2円(1.88%)の手数料 の固定相場制。 ○三井住友銀行のキャッシュカードはプラスに対応。シティバンクのカードに比べ一回の利用手数料は 高いが、南米ではプラス対応ATMの数が圧倒的に多いので利用価値大。 ○郵政公社の「JALマイレージ郵貯ワールドキャッシュ」のカードは、世界150か国の92万箇所の銀行 や郵便局にある「PLUS」というロゴが入ったATMで現地通貨が引きおろせる。 ○強盗・盗難・紛失等用に2枚発行してもらうとよい。ATMがない地方のために3社位用意したい。 ○世界の支店網一覧表を持参し強盗・盗難・紛失等のときは最寄りの支店に連絡して失効手続きをする。 次は最寄りの警察に届け出る。 ○現地通貨引き下ろし時の手数料はクレジットカードのキャッシングより安いので便利。 ■クレジットカード ○今やクレジットカードは種々の支払いや信用保証の点で必携品である。米国、カナダ、メキシコ等は 絶対必要である。 ○ビザ、マスター、アメックス、ダイナーズクラブ等の国際クレジットカードが普及している。これで 現地通貨も買える国が少なくない。米国ではこれでしかガソリンが買えないという給油所もある。た だし、定期的に使用履歴を指定した住所に送ってもらい、引落の正否を適正・迅速に判断すること。 2重請求等の不正やコンピューターの誤作動等で伝票がきられることがよくあるので、明細書をよく 確認する必要がある。 ○現地でキャッシング(借り入れ)したいときは契約条件により限度まで借りられる。ビザカードやマ スターカードの場合、毎月15日締めで翌月10日銀行引落しになる。利息は日歩0.00049%なので、毎月 16日に借りれば借用期間は約55日になり、利率は2.69%とシティーカードの1.88%より高くなるが、 3〜15日の間に借りれば借入期間は約38〜25日になり、利率は1.86〜1.22%になり安くなる。従って、 キャッシングは毎月15日にすれば、利率は1.22%になり最安になる。 ○アフリカはすべてのクレジットカードの中でも、ビザカードのATMが最も多い。 ○強盗・盗難・紛失等用に2枚発行してもらうとよい。ATMがない地方のために3社位用意したい。 ○WEB上で買物やホテルの予約等をするときは、無警戒にクレジット番号を入力しないこと。情報が 盗まれ悪用される場合があるので、重要な情報はfaxをする等、慎重を期そう。 ○現地で現地通貨が少し足りなくなり、両替が面倒なときは、買い物や他の支払の際に「少し多めの支 払金額を申し出て、おつりを多めにもらうとよい。この「キャッシュバック」は、欧米ではよく使わ れている手である。 ○世界の支店網一覧表を持参し強盗・盗難・紛失等のときは最寄りの支店に連絡して失効手続きをする。 次は最寄りの警察に届け出る。 ■現地通貨 ○一番手っ取り早く便利なのがこれ。ただし、持込・持出禁止の国もあり、入国時に没収されたり、入 国時に預け、出国時に首都等で払い戻しの手続きをしなければならないときがある。 ○一般に開発途上国では、出国して他国に入ると途端に価値がさがり、再両替が難しくなる。小銭はま ず不可能。特に経済が不安定な国の通貨は紙屑同然になるので、再入国する予定がないなら出国前に すべて両替するかガソリン等で使いきっておくこと。 ■両替 ○米ドル等から現地通貨への両替は神経を遣う。公定レートのみの国なら選択の余地はないから何ら問 題ないが、ほとんどの国は公定と非公定(国によっては闇レート)のレートがある。信用がない通貨 やインフレーション等でこの差が大きいときは、損得を計算しない旅行者はいない。ときには100米 ドルでエンジンを買い替えたり、日本往復の航空券が買える。 ○安全かつ効率的な両替のポイントは「両替の安全性とレートの情報をできるだけ集める」ことである。 これから行く国からきた旅行者は特に最新の情報を持っており、この情報を得ておかないと長旅では 資金的に格段の差が出る。食堂、給油所、宿等の人のように、相手の所在が明白なら比較的安全であ る。 ○世界には両替で生計を維持している者がたくさんおり、中には悪人も少なくない。詐欺師、魔術師、 手品師等がいてあらゆる手段やトリックで旅人をだます。できるだけ旅行記等を読んで失敗談等から 教訓を得ておき、慎重にすること。国境界隈、街頭、市場等の所在不明な両替人は慎重を期すこと。 ○闇両替は当事者が弱みを持っており、これに着目した悪人がいる。偽の両替屋と警官役が旅人に甘い 話を持ちかけ、突然現れた警官役は「闇両替は違法だ!旅券を見せろ!」等と迫り、混乱している内 に現金を持ち逃げされる。 ○ペルーでは偽札がよく出回っている。国境や街頭の両替人に偽札をつかまされるケースが多い。 ○ときには電卓を不正に細工したインチキ両替屋あり。米ドルやインドルピーのように額が変わっても 形と色が同じ国は少なくなく、注意しないとごまかされる。 ■お金の携帯 ○各個人のアイデア次第である。私は、国境で申告する金額は布製の小袋に入れて首から下げて、下着 の下の肌と首の重さで所持を確認していた。安宿等でのシャワー時はビニール袋に入れて、同様に首 から下げていた。就寝時も危険なので、常に肌身離さず、これで事故はなかった。 ○日常申告しない金は、道具でしか開閉できない車内の換気ダクトにしまっておいた。これが見つかっ たことはなかった。 ○お金の隠し場所も判断を誤ると取り返しがつかないことになる。チリ入国時に、いったんはゴミバケ ツの底に申告しない金を隠し、不安を感じて元の換気ダクトに戻した。ところが、入国時の検疫官は 社内のゴミバケツを発見すると、断りもなしにバケツのゴミを目前の深い谷にいきなり捨てた。肝を 冷やしたのはいうまでもない。多くの国が野菜、果物、ゴミ等の持ち込みで害虫が蔓延するのを予防 しており、国境通過は慎重を期したい。 ■その他 ○開発途上国の僻地の国境でいきなりその国の小銭が必要となることがあるので、できれば事前に小額 入手が効率的。小額の米ドルは常に効果的。ただし、「自国通貨は持込・持出禁止」という国は没収 されることがあるので、事前に情報を収集しておくこと。(例:1974年のタンザニア) ○米ドル旅行小切手を現金化するとき、一度現地通貨にしてから米ドル現金にすると有利なことがある。 ○日本国内の金融機関で各国の通貨預金をしておけば、キャッシュカード持参でその国で引きおろせる。