地球ドライブのノウハウ(23)走行法@


■基本事項

 ○国内走行と同様の一般的な知識をもつ。運転中の地図の置き場所、地図の読み方、運転中に地図を見
  るときの注意、道の聞き方、道路標識の見方、通行区分帯、最高速度、最低速度(アメリカのハイウ
  ェーを低速で走っていたら、パトカーに「もっと速度を上げろ!」と指導された)、駐停車の仕方、
  ヒッチハイカーとの付き合い方、睡魔対策、喫煙時の注意、ラジオ・ラジカセ・CD・ナビゲーター・
  テレビ・GPS等の操作や確認時の注意、給油所での燃料補給時の注意、自分で燃料補給時の注意、安
  全なパンク処理法、警官や軍人等に止まるよう合図されたときの対応法、車の修理法、交通事故時の
  緊急対処法等。

 ○舗装道路、砂利道、夜間、雨天時、強風時、降雪時、凍結時、半砂漠、砂漠、一定の周期に波を打っ
  た洗濯板の表面のようなデコボコのコリゲーション道、周囲が見えず交通標識もないブッシュの中の
  細道、高速道路、橋のない小川渡り---それぞれの走り方を常識的に知っていること。

 ○未知の外国では、速度を落とす。前方の状況は想像できず、何が待ち構えているかわからない。地元
  民は優先道路だと交差点でも速度を落とさず疾走してくる(ドイツ等)。カーブの角度は予想不可能
  である。雨の日は、土砂崩れ中の箇所に遭遇した(旧ユーゴスラビア等)。砂塵や霧等で前方確認が
  不可能なときは、絶対追い越さないこと。

 ○朝起き後の作業。体調確認、体操、天候予測、車の周囲の安全、車体のルーフキャリアから足回り、
  エンジン室、燃料、オイル、水、食料、当日の予定、走行予定ルート、走行予定距離---の確認、運
  転中に水を飲むための水タンクを運転席隣の定位置へ、昼食やスナックの準備。

 ○眠気を催すのは前夜が睡眠不足だったり、朝昼食後1〜2時間後、単調な高速道路や砂漠、ポカポカ陽
  気のときである。歌を歌う、ガムをかむ、お尻を片方ずつ上げる、顔を叩く---で眠気を払拭するが、
  危険なときは駐車場や道端等に停車して30〜60分位は仮眠しよう。仮眠後はウソのように頭がさえる。

 ○車は命だし、最愛の相棒なので常に親愛な声を掛けて、丁寧な扱いでドライブしよう。

■道を聞く

 ○まず地元の言葉を覚える。とにかく、しつこいほど聞きまくる。1人から聞いただけでは間違った情
  報や、ときにはウソもある。できれば3人以上から聞く。道路やルート情報は「顕著な建物や交差点
  等の●●から約何百m、約何km。時間的には●●から約何十分、約何時間」等のように、数字もき
  いてメモしておけば、より確かになる。道をきいているうちに、目的先の開設時間やその他の有益な
  情報も聞くように習慣化していると、「今日の最終フェリーは○○時だよ」等と無駄足を防げたり、
  ときには「●●に入るには△△で許可証がもらえるよ」等と思わぬ朗報を得たりする。

 ○道を聞いていると「あなたは外国の旅行者か、どこの国の人か、どこを旅行してきたか、これからど
  こへ行く---家でもっと話を聞かせてくれ、家族と食事でもしないか、たまにはシャワーを浴びたく
  ないか---」と自宅に招待されることがたびたびあった。

 ○交通標識がない交差点、分岐点では無理に突入しない。辛抱強く前後からくる人や車両を待ち、聞く。

■積荷は極力軽く

   積荷は燃料を食う、貴重なお金が浪費される、速度が速いとカーブは曲がり切れない、急停車時は
  思ったところで止まれず交通事故の危険が増す、車の足回りの故障や傷みが増す、泥道にはまりやす
  くなる、砂漠のソフトサンドにタイヤが埋まりやすくなる、パンクしやすくなる---ということで、い
  いことはない。

■交通区分帯

 ○左側通行国

  oアジア------インド、インドネシア、シンガポール、スリランカ、タイ、日本、ネパール、パキ
         スタン、バングラデッシュ、ブータン、ブルネイ、旧香港、旧マカオ、マレーシア。

  oヨーロッパ--アイルランド、イギリス、キプロス、マルタ。

  oアフリカ----ウガンダ、ケニア、ザンビア、ジンバブエ、スワジランド、セイシェル、ソマリア、
         タンザニア、ナミビア、ボツワナ、マラウイ、南アフリカ、モーリシャス、モザン
         ビーク、レソート。

  oオセアニア--オーストラリア、トンガ、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィージー。

  o北中米------アンティグア・バーブーダ、ケイマン諸島、ジャマイカ、セントクリストファー・
         ネイビス、セントルシア、ドミニカ共和国、トリニダード・トバゴ、バージン諸島、
         バーミューダ、バハマ、バルバドス。

  o南米--------スリナム。

 ○右側通行国(左側通行以外の国)

 ○国によって交通区分が変わっても、すぐ慣れる。
 
■交通標識

   だいたい常識でわかる。行き先表示は、交差点手前に1箇所しかない、またはまったくない所が大
  半である。行き先表示がないときは、面倒でも地元民をさがしてきくこと。行き先を確認しないで
  「---だろう」を繰り返していると、間違いが多い。重要な分岐点等で標識も人家もない所は、後続
  車を待って確認するとよい。アメリカのハイウェーのように、分岐点や交差点手前の3箇所位に掲示
  されていて、1度見落としても2度目3度目でわかる所はありがたい。

■給油所

 ○給油所にはほとんど便所があるので、給油を依頼してから活用しよう。便所だけの利用はマナーに反
  する。清潔な水の調達も同時にするとよい。

 ○アメリカは自分で給油する所は値段が安いが、火気等の注意も必要である。

 ○世界の給油所にはマジシャンのようなのがいて、日本の感覚で安心して給油してもらうと、結構だ
  まされる。これは「イカサマ師はどこにもいて、常に、すきを見せた客をカモにしてしまう!」と
  いう事実を忘れたころ現れるから、厄介である。

 ○周囲の給油所の分布や在庫を知っているので、次の給油所まで距離があるなら予備燃料を購入すると
  よい。その他、地域の情報源としては大切な所で、よい人と出会うとよいことが待っている。

 ○適切な宿泊キャンプ地捜しに困ったら、給油所はよい。売店やシャワーがある所もあるし、夜間も人
  がいる所が多いので、安全である。

■一般道

 ○急激に車社会になりつつある途上国等では、交通事故は物凄く多い。対向車、および後続車からの2
  〜3重の無理な負い越し車に注意する(インド等)。大型家畜との接触もある。

 ○アメリカからメキシコへ、ヨーロッパから北アフリカへ入ると、一般道のリズムはかなり違う。郷に
  入っては郷に従い、以前の運転感覚から早急に切りかえること。速度違反ですぐ捕まることがある
  (メキシコ等)。徒歩者、自転車、家畜等と接触する恐れがある。

 ○支線から幹線に入る所には、必ず一時停止線と交通標識があるが、道さがし等でこれを見落としてう
  っかり幹線に入ると、高速で走っている幹線の車と衝突して大惨事になる。ドイツでは、危機一髪で
  相手が衝突を回避してくれたが、すぐ停車して土下座をして謝ったら、許してくれた。

 ○交通量が少ない所は、気を緩めて安心していると、カーブで急に対向車が現れて交通事故になる(ノ
  ルウェー等)。

 ○大型車は、谷側の路肩が軟弱だと道の中央か山側を走る傾向がある。この危険を予知していないと、
  急に現れた大型車とすれ違いができず、交通事故になる(ノルウェー等)。

 ○馬車が発達していた欧米は、それに伴い古くから舗装道が整備されたから、人車が別で安全に走れる。
  開発途上国はまだ車社会ではなく、自分さえ注意すれば安全である。これに比べ、産油国等で急激に
  車社会になったベネゼエラ、ナイジェリア、イラン等、または日本のように徒歩・カゴ・自転車・力
  車等から急激に車社会になった国は非常に危険である。

 ○のんびりした開発途上国では牛、馬、豚、羊、ラクダ、ロバ、ヤギ、ニワトリ、アヒル等の家畜が無
  頓着に闊歩していて、この雰囲気にあわせたドライブをしないと、彼らと衝突して大変なことになる。

■溶けたアスファルト

   熱帯低地のアスファルト道は、溶けて軟弱になっているいることがあるが、速度を落として、急ブ
  レーキは踏まないこと。それでなくとも車の底は溶けたアスファルトでベトベトになる。

■高速道

 ○一般的には日本と同じである。だが、ドイツのアウトバーンは速度制限がなく、時速100kmで走
  っていると、時速250kmの車に抜かれたりして肝を冷やすが、注意が必要である。

 ○インターチェンジや交差点では、行き先確認が遅れることがある。こういうときは決してあわてず、
  急ハンドルや急ブレーキを操作しないで、次の出口まで走る習慣にしておく。さもないと、何十回に
  1回は失敗して、後続車と交通事故を起こす可能性がある。

 ○先進国には適当に設備が整った休憩所があるので便所、給水、休憩、宿泊を含めて活用するとよい。 

■砂利道

 ○アルゼンチンの大平原のように延々と続くときは、対向車に小石を跳ねられるので現地人と同じよう
  にフロントガラスとヘッドライの前面に金網を張る。車の底にも張ると、傷めないですむ。

 ○高速で急ハンドルを切るとタイヤが浮いてスリップし、当初は曲がれず直進してしまい、野生馬や家
  畜等と衝突することがある。その後、タイヤが着地したときは速度がついているので、横転する危険
  が高い。砂利道はあせらず安全運転でゆくこと。

 ○デコボコ道はパンクがわかりにくい。わかったときはタイヤがズタズタに破裂しているか、ホイール
  ごと吹っ飛んでしまったことがある(ペルー等)。

■コルゲーション(洗濯板道)

   多数の大型車が砂利道等を高速で走ると、洗濯板のように規則的にデコボコと波打った表面になる。
  こういうときはあせらず、時速30〜60km位でゆられながら走る。ゆられることに我慢できず高
  速で走ると、運転者へのゆれは軽減されるが、車の足回りへの負荷は計り知れないほど大きく、故障
  の危険がある。ゆっくり走っても油圧式ショックアブソーバーをたくさん壊した(サハラ砂漠等)。

■開発途上国の一般道

   道は単に交通のみにあらず、生活の場と直結している。路上で収穫した作物を干し、脱穀し、子供
  の遊び場だったり、道端で青空学校が開設されたりしている。通行者、屋台、物売り、水汲み者、家
  畜の移動、自転車、リヤカー、荷車、一輪車、二輪車、バス、自家用車、牛車、馬車、象、水牛等が
  往来し、それらの生活者の一員として、ゆっくり走行しなければならない。私は、インドの人ごみの
  中でゆっくり前進していたら、荷車に追突された。とにかく人車等が混雑して、身動きがとれない土
  地もある。

■家畜等がいる集落の道

 ○犬、猫、ロバ、牛、馬、羊、ヤギ、豚、鶏、アヒル、ラクダ、リャーマ、トナカイ等の家畜がいる道
  は慎重にドライブすること。彼らも我々と同じ生き物であり、優先順位は彼らにある。

 ○車社会から開発途上国に入ると、道の界隈に放し飼いの家畜がいる。これらが路上にいれば注意して
  前進するから問題ないが、道の近くにじっと立っていたり、近くで動いているときは危険である。こ
  ういう場所は、速度を落として慎重に運転すること。

 ○家畜群が道を移動しているときは、これを優先させ、群のずっと手前で渡りきるのを待つこと。

 ○こんな交通事故例をきいた。アフリカ大陸縦断をしようと4台の車を仕立てて、ヨーロッパから北ア
  フリカに入り、ヨーロッパの感覚がまだ抜けずに車が少ない所でヨーロッパ並に飛ばしていた。先頭
  の車は、道の外れに家畜がじっとして動かないときは、速度を落とさずに何度か通過した。後続車も
  それに見習って高速で通過した。

   ところが、ある場所では突然ロバが道を横断し始めた。あわてて急ブレーキを踏んだら、仲間の後
  続車に追突され、2台とも大破して、早々にアフリカ縦断の夢は消えたという。

 ○急ぐ用事があると、つい速度がでる。雨で滑りやすくなった赤土の道を急いでいたら、突然、やぶか
  ら子豚が1匹でてきて道を横断し始めた。急ハンドルを切っても濡れて滑りやすい赤土道は制動が効
  かないし、急ブレーキを踏めばスリップしてやがて横転する。そこで、そのまま慎重に走り、子豚が
  車の真下にくるようにハンドルを少し切った。これは見事に成功した。しかし、もし、村人の前で大
  切な財産である家畜を跳ねたら、多額の弁償を余儀なくされるか、袋叩きに遭うだろうと、一瞬背筋
  が寒くなった。

   ところが、ある村では子ヤギとの衝突が避けきれなかった。やむを得ず、極力速度を落としてゆく
  と、子ヤギは車体に当たって跳ね飛ばされた。バックミラーで見ると、子ヤギは一回転してから立ち
  あがり、何事もなかったかのように、すたすたといってしまった。これも運が良かったが、速度には
  十分反省した。

■大型動物がいる広大な原野等の道

 ○牛、馬、羊、カンガルー、ワラビー、エミュー、ダチョウ、レア、野ウサギ等がいる広大な原野等の
  道では、彼らが主人である。人間は彼らの領域に勝手に入って走行するだけでも迷惑なのだから、で
  きるだけ迷惑をかけないこと。

 ○基本的には上記と同じだが、驚いた馬等がはるか彼方から道路を横切り、子馬がその後を追うことも
  あるので、相手の動きに合わせて速度を調節すること。アルゼンチンでは危うく子馬と衝突するとこ
  ろだった。

■大型野生動物がいる自然動物保護区等

 ○大型野生動物は常に優先させる。近づきすぎて驚かしてはいけないし、写真撮影のために「こっちを
  向いて」等と警笛も鳴らしてはいけない。空ぶかしも禁止である。

 ○写真撮影は車内から行い、やむを得ない事情がないかぎり、車外にでてはいけない。ライオンに襲わ
  れた観光客がいる。

 ○野生動物に餌をやってはいけない。ゴミのポイ捨ても禁止である。

 ○保護区等は広大で、道は非舗装で一車線が大半だから、悪路やソフトサンドにはまったり、タイヤの
  パンク、車の故障時等は危険である。保護区等に入る前にはトイレを済まし、車のメンテナンスは十
  分にしておくこと。スペアータイヤはリム付きで最低2個以上用意し、パンクしたタイヤの交換時は
  見張りを厳重にし、素早く行うこと。アンゴラでは砂地にはまった新婚旅行のカップル車が野獣の真
  っ只中で一夜を明かし、翌日に遭遇して助けてあげたら泣いて喜んでいた。

 ○保護区等のなかでは、宿泊指定地以外でキャンプや宿泊はできない。通常は日没前に、指定地にゆく
  か、出なければならない。

 ○夜間走行は禁止である。 

■山岳道

 ○カーブが多く、狭く、対向車とすれ違う際は慎重にする。空いていても決して速度を上げず、いつ対
  向車が現れても、落石や崖崩れがあっても、事前に回避できるような心構えが必要である。

 ○路肩は、ガードレールがない所が多い。谷側の大型車は、軟弱な路肩を気にして中央線よりに走りが
  ちなので、あらかじめ頭に入れて走る。ときには雨、霧、雪等で、さらに見とおしが悪くなるので、
  場所によっては警笛をいちいち鳴らすのも一方法である。 ノルウェー北部ではカーブ毎に「警笛鳴
  らせ」と交通標識が強制していた。

 ○砂利道や泥道は、速度があがると急ハンドルや急ブレーキが効かない。下りはゆっくり走る。上り時
  は、下りの対向車が速度を上げていて、急ブレーキが効かずにすべって下りてくることがあるので、
  下り車と衝突しないようにその分の逃げ場を常に考えておく。
 
■高山道

 ○海抜3,000〜4,000mから酸素が平地の3分の2以下になって、エンジンの調子が狂い馬力が
  落ちる。あらかじめ、地元の車のディーラーや修理屋と相談するとよい。

 ○上りは、アクセルを適当に踏むからいいが、下りは危険だ。アクセルを踏めば速度がつきすぎて危険
  だし、曲がりくねった下りは、速度をだせないからエンジン回転数が落ちる。すると、エンジンが止
  まる。止まらないようにアクセルを踏むと、また速度がですぎて危険になる。結局、ギアーをセカン
  ドかサードに落として回転数を上げるか、トップギアーでアクセルとブレーキとクラッチを同時に踏
  んで、この難関をのりきった。クラッチの磨耗は、大きかったと思う。オートマ車なら、事前に何ら
  かの対策が必要だろう。

 ○昼食・写真撮影・トイレ等で停車するときは、アクセルペダルに水ボトルか工具箱でも置いて、エン
  ジンの回転数を落とさないで、回したままにしておく。さもないと、途中でエンジンが止まって、か
  けるのに苦労する。

 ○夕方のキャンプ時は、坂の上に駐車する。朝、エンジンのかかりが悪いときは、ギアー入れたままセ
  ルモーターを回して坂に下り、ある程度速度がついたら、急にクラッチを合わせれば、エンジンはた
  いていかかる。

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