地球ドライブのノウハウ(24)走行法A


■砂漠

 ○砂漠の地表は複雑である。舗装道、固い砂地、ソフトサンド、車のわだち、大穴、土漠、岩石と砂地
  の混合砂漠、橋のない小川、枯れ川、砂嵐、竜巻、電柱、ドラム缶・棒・石積み標識等で方角の参考
  になる物、放棄された車やタイヤの残骸、鉄道の軌道等があり、たまに遊牧民やラクダの群れに出会
  う。危険を感じたら、事前のオアシス等でガイドを雇うこと。

 ○文明圏ではないので舗装道も気が抜けない。単調な運転と暑さから眠気を催し、睡魔との闘いを余儀
  なくされる。高速走行で気づくのが遅れると段差のある路肩から車輪が外れ、横転する。(日本人ビ
  ジネスマンで犠牲になった人あり)執拗に水が飲みたくなる。長時間の横風、単発のつむじ風と砂嵐
  あり。

   快調に高速で走行していると、ときどき路上に堆積した流砂の丘に遭遇する。砂丘地帯では、周囲
  の砂丘の移動とともに道路をまたがる流砂の丘に高速で突っ込むと、激しい衝撃に見舞われる。運が
  悪いと車が故障したり壊れたりする。故障時は、人や家が皆無だからすべて自分で修理しなければな
  らない。このときの心理状態は非常に不安定になり危険になる。自分で修理できないときは、冷静に
  通りかかる車を待って救援を頼めばよい。行き交う車はなくとも、高速走行には十分注意し、遠くに
  流砂の丘が見えたら必ず速度を落とさなければならない。

 ○昼間は必ず風が吹き、ハンドルが片側に取られる。風で砂が流れる。大小の竜巻が遠くに立つ。逃げ
  水現象や蜃気楼で、ゆく手に湖が見えたり、地平線が砂漠にすいこまれるように見える。

 ○やや固い砂地と、ときどき横たわっているソフトサンドの大平原の走行法。これが結構難しい。

  @ 砂漠には何もないところが多いから、全体的な方向を磁石やGPSで確かめながら、何本も走って
    いるワダチの方向を選択する。地平線に丘陵等があれば、方向の参考にする。夜は危険すぎる。

  A ワダチは四方八方に走っているので、自分の目的方向から大きく外れないように注意する。さも
    ないと、どこにゆくのかわからず危険である。

  B なるべく新鮮で、多くの車が走った後のワダチを探して走る。ワダチが流砂に埋まっていて古い
    と危険である。

  C タイヤの空気圧を2〜4割下げ、砂面との設置面積を大くして、キックする力をつける。空気圧
    が正常だと、ただタイヤが空回りするだけでキック力はなく、埋まりやすい。

  D 幅数m〜数十mのソフトサンド地帯を渡るときは、なるべくハンドルを切らない。ハンドルを切
    るとタイヤと砂の対抗が増し、埋まりやすい。

  E ソフトサンドは、セカンドかサードギアーで、時速40〜80kmで勢いをつけて渡る。まさに
    突っきる。ゆっくり渡ると、タイヤがソフトサンドを蹴る力は少なく、車が砂に埋まりやすい。
    巾が10m以上のソフトサンド地帯は加速をつけて猛然と突っ込み、勢いで渡りきる。トップギ
    アーではタイヤがソフトサンドにとられ、止まりそうになる。車の速度が落ちれば、タイヤを回
    転させる力が弱いので埋まりやすい。

  F ソフトサンドには、ときどき他の車が埋まって、砂を除去して脱出したときにつくった大穴があ
    る。深さはいろいろある。速度をつけすぎると、この穴の発見が遅れて突っ込み、大きくバウン
    ドして車を傷め、砂に埋まりやすい。回避しようと急ブレーキを踏むと、車内の荷物がすべて前
    方に吹っ飛んでくる。(バケツに野菜の浅漬けをつくっておいたら、車内にぶちまけられた。頭
    は何度天井に打ちつけたかわからない)

     大穴を回避するために急ハンドルを切ると、横転しやすい。したがって、適度の速度をだしな
    がら走り、事前にこの穴を発見して、なるべくさける。間に合わず、やむを得ず突っ込むときは、
    なるべくハンドルは切らず、勢いで渡る。ソフトサンドの巾が広ければ、車への衝撃を覚悟して
    そのままの勢いで渡るか、砂に埋まって脱出作業を繰り返すか、瞬時に選択する。なるべく衝撃
    を和らげるため、多少ブレーキを踏んでも勢いで渡れそうなら、ブレーキ操作をする。このころ
    あいが結構難しい。

   これらを繰り返しても、砂地の状況によっては、たびたび砂に埋まるので、その脱出法。

  @ 車体の下の、前後輪の下と前方の砂を、シャベルや手で車の外側にかきだす。後輪だけが埋まっ
    ていれば前輪の前方と、後輪の下と前方の砂を除去する。

  A ジャッキで後輪(駆動輪が後輪のとき)を浮かす。短い金属製のハシゴや穴明き鉄板等を敷く箇
    所以外の位置に、ジャッキ沈下防止用の板等を敷き、これにジャッキを載せて車を上げる。

  B ハシゴ等の後部端を後輪の下に敷き、ハシゴ等の前部の端は、前輪後方に置く。ハシゴ等の長さ
    は前輪後部から後輪の下までとする。後は、発進時にハシゴ等が動かないように少し砂をかける。

  C タイヤの角度は前方に真直ぐ保ち、ゆっくり前進する。タイヤがハシゴ等から砂地に移ったら、
    できれば勢いをつけてソフトサンドを渡りきる。また砂に深く埋まりそうになるなら、事前に止
    まり、ハシゴ利用を繰り返す。ハンドルを切ると前輪に抵抗が発生し、また埋まりやすい。

  ※ もし、前輪の前方にも敷き、ハシゴ等を計4個敷くと、車が前進した後、前のハシゴ等が前輪と
   後輪の間に入ったときは、砂やタイヤに蹴られて定位置が定まらず、車の底部に挟まって車を傷め
   るので、採用できない。

    また、ハシゴ等を長くして片側の前後輪に同時に置くため2本にすると、後輪から前輪前方数m
   の長さでは、砂の除去をすべて均等の深さにしなければならず、無駄が多すぎて実用的ではない。
   このハシゴ等は泥道にも使うので、ハシゴ等の長さはBの長さがよい。

    1回の脱出作業でも「もし脱出できなければ---」と、不安になる。暑さの中で必死にもがき、
   緊張もするからのどが渇く。必死に砂や小石をかきだすから手に傷ができやすい。落ち着いて行う
   こと。ここでは人間が試される。これらの理由から、車はとにかく頑丈で、重量は極力軽くしてお
   くこと。

■雪道、凍結道

   スノータイヤ(スタッドレス)、スパイクタイア等が必要。アフリカとオセアニアは不要。

■橋のない川、泥道、涸れ川

 ○開発途上国や交通量が少ない地方、雨がたまにしか降らない地方には、川に橋がない所がある。涸れ
  川は路面の砂や岩に気をつければよいが、水がある川は川底に何があるかわからず、慎重に渡ること。
  水深が浅く、川底が見えて固そうなら、速度を落として慎重に渡る。速度が速すぎると、予期せぬ川
  底の大石、丸太、深い窪み等で車を傷めるし、寒さでヒーターを入れておくと、加熱したエンジンや
  付属機器が冷水を浴びて蒸気が発生し、換気装置のダクトを通って車中に入ってきて、一瞬、蒸気で
  前方が見えなくなることがある。速度が遅すぎると、川底の泥や木材等にタイヤがとられて、川中で
  埋まることがある。

 ○川底が見えず、または柔らかそうなら、車を止め、足で水深、流れの速さ、川底の柔らかさや突起物
  等の状態を確認してから渡る。不安なら、次にくる車の渡河状態を見てから判断する。場合によって
  は、他車に牽引してもらったり、迂回道を探す等して、決して車を不用意に傷めないこと。

 ○川で埋まる、または泥道で埋まると不安になり、興奮して準備不足で脱出作業に没頭しがちだが、長
  靴や手袋、牽引用のワイヤロープの取付、水中や泥中の状態の確認等、手順どおりに行うこと。誰か
  が脱出作業で使った丸太等が泥中にかくれていると、思わぬアクシデントが起こることがある。

■オーストラリアの大型トラック「ロードトレーン」

   20トンクラスの大型車両を3〜5両連結して、体重5百キロの牛もフロントにつけられたガード
  枠でぼんぼん跳ねて疾走する。もちろん大型動物がいれば数百m手前から警笛を鳴らすが、衝突しそ
  うになっても速度は落とさず疾走してゆく。すれ違うと風圧でバン型車はぐらつく。小石や砂塵を跳
  ね、フロントガラスやヘッドライト破損に注意が必要である。砂塵は数kmもたなびく。前方からも
  後方からも、これとの遭遇には細心の注意をはらい、道路脇を徐行するか一時停車して、道を譲ろう。
  道路脇にはロードトレーンに跳ねられた牛やカンガルー等が無数にあり、オーストラリアならではの
  悲しい情景が展開されている。全国に無数にいる蝿がこれらの死体に卵を生み、ウジが沸き、悪臭を
  放ち、やがて骨と皮になって砂塵に埋もれてゆく。

■フェリー、船、列車等への乗降

   乗降時の段差に気をつける。輸送中はゆれるので、サイドブレーキとともにギアーを入れておき、
  必要に応じてタイヤ止めをかますか、ワイヤロープ等で固定する。一般的には、車の外にでているこ
  と。車内の荷物を狙う泥棒にも注意する。

■ゲリラ、飢餓民等の地域

   事前に十分情報を集め、これらのルートは極力さける。やむを得ないときは、昼間、地元の車両を
  入れた複数車両でコンボーイを組み突破する。襲われたら---抵抗しないこと。命が残ればいいでは
  ないか。
  
■夜間走行

   原則として避ける。景色は見えず、方向を誤りやすく、行き先を聞く人が少なく、路上の状況を把
  握しにくい。観光できない。集中豪雨で橋が流されていたり、橋のたもとがえぐれていたり、低地が
  池になっていたり落石、濁流、陥没等を見つけにくい。山賊も怖い。

■その他

 ○地方によっては混雑緩和のため偶数・奇数日によって通行禁止や一方通行だったり、ナンバープレー
  トの番号が偶数・奇数で走行制限あり。(メキシコシティ等)3車線の中央は追越専用の地方あり。
  (フランス等)

 ○北欧3か国は緯度が北のため夏以外は昼でも薄暗い。そこで相手車に車の存在を知らせるため昼間で
  もヘッドライトを点けるように義務付けられていた。

 ○国や地方によっては警察、軍人、税関吏、有力者、テロリスト、物乞い---が車を止める。通常は常
  識的な対応でいいが、臨機応変に対応する。

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