地球ドライブのノウハウ(8)入出国手続


■日本での車の出入手続

  日本から車持参で出国するときは、カルネ不要国にゆくときでもカルネを取得して、これに基づく車
 の出国手続きが簡単。入国も同様。さもないと「本当に車の所有者か」「盗難車ではないか」「テロリ
 ストではないか」等と疑われて通関や入国に手間取る。ときには入国できない。

  カルネなしで日本から車を持出し・持込みするときは、関税・消費税等の複雑な手続きになる。日本
 からロシア、中央アジア、ヨーロッパ、北アフリカ、北中南米をカルネなしでドライブできるし、途中
 で車を売ることも可能。

■国境は何曜日の何時頃に通過するか

 ○出入国に何の不安もないときは何曜日でもよいが、混雑する時間帯は不必要な詮索がないのでよい。

 ○出入国にトラブルになりそうな種々の不安があるときは、国境係官の気がゆるむ休日前か休日の繁忙
  時間帯がよい。

 ○事前に国境が開いてる時間を確認し、出入に十分な通過手続時間を考えてゆく。数時間は当たり前。

 ○入国しても安全なキャンプ場所を確保できない日暮れ以降は避けるべきである。

   私のカルネでは無効だったアルゼンチンに日曜の夕刻に入国。十分考えた末、僻地の日曜日だから
  ノンビリしていて見逃してくれるだろうと思ったら逆効果だった。お暇な役人はカルネを徹底的に調
  べ、さんざんもめてやっと入国したが、暗くなっていた。僻地・処女地の暗闇ではなにもわからず、
  キャンプ地に決めて夕食をとっていたら---「軍事基地内」だった。

■国境通過前準備

 ○出国する国の貨幣は食料やガソリン等の購入で使いきる。世界の基軸通貨以外は外国では通用しない
  ことが多く、かりに入国先で現地通貨に両替できても両替率が落ちるのが通例である。

 ○行く先の国のガソリンが高ければ事前に満タンにする。1リットル約10円のイランから約220円のトル
  コへゆくなら、イランで予備タンクを買って積めこんでもお得。スペインからモロッコへも同じ。

 ○入出国には時間がかかることが多いので、事前に腹ごしらえしておく。

 ○便所はすませておく。

 ○入国時は現地通貨が必要なときがあるので、できれば用意しておく。ただし、現地通貨は持込持出禁
  止で、没収されることがあり、事前に調べておくこと。小額の米ドルは常に有効。
  
 ○車内が土埃などで汚れていて生活用品が乱雑になっていると、手の汚れ等をいやがって税関検査等が
  短時間なことが多い。悪徳官吏にはポルノ雑誌で矛先をそらすのも通過術の一つ。

 ○料理した鍋を車内に置いておくと、フタを開けた係官は「プライバシーに立ち入り過ぎてすまん」、
  「そこまで疑ってすまん」と思って、以後の手がゆるくなり、検査時間が短くなる傾向がある。

 ○害虫侵入防止のため、米国のカリフォルニア州や南米のチリ等、他地域からの果実等の持込には禁止
  措置をとっている所があり、見つかれば没収される。事前に確認して処理をする。私はチリ入国に際
  し、「いきなりゴミバケツのゴミを谷底に投げられた」ときは、心臓が一瞬止まった。入国前に旅行
  資金隠し場所に迷い、いつも隠していたゴミバケツの底から他の場所に変えたため難は逃れたが、間
  一髪であった。

 ○持込禁止品の処分。銃、麻薬、酒類・ポルノ・避妊具(厳格なイスラム国等)、腐った果物や野菜、
  遺跡からの出土品、保護動物の角や剥製等、政治・宗教宣伝文書等。誰かから預かった荷物の中身が
  麻薬で、逮捕され服役中の日本人は88人(2006.1現在)。西サハラとモロッコの国境では、ドイツ人
  自動車旅行者が空気銃を発見されて、問題になっていた。

 ○旅行者が消費する煙草、酒類、カメラ、フイルムでも一定量以上になると課税されるので、要注意。

 ○人相が悪いと何かと疑われて余計な時間がかかる。顔や服装は清潔にしておく。

 ○提示を求められる旅券、イエローカード、所持金、カルネ、自動車運転免許証、国際車検証等はすぐ
  とりだせるように準備しておく。役人の前で、肌着の下の小袋から所持金をだせば興味津々とさせて
  しまうので、これは肌着の上にしておくこと。

 ○国によっては一定以上の外貨は申告しなければならないので、申告する分は出国まで慎重に申告書を
  保管すること。紛失すれば外貨を没収されると覚悟すること。そうでない分は絶対に見つからない所
  に保管すること。

■通過中
  
 ○真摯に対応する。忙しい係官に協力するように書類等をそろえておき、車内は見やすくしておく。相
  手をイライラさせない。係官の要求に適確にテキパキと応えること。余計なことはいっさい話さず、
  しゃべり過ぎないこと。係官は、基本的には「有害な人物か否か」を探ってくるので、笑顔で健全な
  旅行者風に応対する。警戒心を抱かせない。

 ○禁止品は持ち込まない。麻薬は勿論、すべての国は不法な銃とペットはダメ。リビアはポルノや避妊
  具もダメ。密輸は厳禁。係官に要求されてもむやみに物を与えない。ニセ役人、ニセガイド、インチ
  キ両替商人、強引な客引きに惑わされないこと。

 ○日本人に対する好感度はさまざまで、良いときは冗談も交わせるが、悪いときは静観が無難。

 ○どこの国境もパーソナルグッズ(私用品)は無税。即席麺は100個でもOKだろう。だが、例えば電卓が
  2〜3個ならいいが、20個もあれば関税がかかるだろう。

 ○イスラエル入国後はアラブ諸国に入れない国があるので、イスラエルの入出国スタンプは旅券に押さ
  ないで別紙にもらうことになっている。これはイスラエルの政策(各宗教の聖地巡礼に便宜等)の一
  つで、1975年も2005年も同じだった。イスラエル出国後のアラブの国で、旅券の入出国箇所や日を綿
  密に精査することは滅多にないが、もし不安ならイスラエル出国後、ある国の日本大使館に事情を話
  せば新旅券を発行してくれる。昔の人種差別国・南アフリカ訪問後に入国を拒否する国に行く人は、
  皆そうして再発行してもらった。

 ○中国からの援助が多く、政治的に親中国的な国は、旅券に台湾ヘの渡航歴があるとビザが取れなかっ
  たり、入国できないことがある。

 ○中米諸国は、一般的にキュ−バへの渡航歴があると問題化しやすい。

 ○賄賂の要求は原則として断る。賄賂か正式な手数料・経費等か不明なときは、納得するまで聞く。イ
  スラム諸国、中年米諸国はイカサマが多い。

 ○人の検査

   旅券、ビザ、イエローカード、国際自動車運転免許証、流行病罹患状況、国際指名手配、過激派等
  の検査。
 
 ○車の検査

  oカルネ、国際自動車登録証(カルネが不要な国は、検査なしが多い)、対人強制保険加入証(不要
   の国も多い)の検査。カルネが不要な国では、その国の規則に従い車を売却、または置いて出国で
   きる。カルネを使って入国し、車を売却するときは、その国の自動車クラブ等に相談し、車の輸入
   関税等を払ってカルネを処理し、カルネの発行元に処理済のカルネを送って指示に従う。入国時に
   カルネを使用したら出国時にもカルネを使用するのが基本だが、交通事故等で車の搬出が不可能な
   ときは、各国の税関等、関係機関で手続きをすれば問題ない。

  o車の機能は国際自動車登録証で証明されているので、検査なし。電球の球切れ、ブレーキの不具合
   等、何も検査はしない。

 ○物の検査

  o車の部品はカルネで「売らない。個人消費用」として保証されているので、必要以上に多くなけれ
   ば課税の対象外である。

  o課税対象物(大量のフイルム等は課税される恐れがある)、持込禁止物等の検査。野菜、果物等の
   持込み禁止国がある(アメリカのカリフォルニア州、チリ等)。即席麺は100食あっても「自己消費
   用」といえば問題ない。

  oビデオ撮影機、録音機、GPS(グローバル・ポジショニング・システムの略。人工衛星からの電
   波をキャッチして自分の位置を知らせる表示機で、カシオ製腕時計は約4万円)、電気ウキ、パソ
   コン等のハイテク品は疑われやすい。

  o害虫の持込みに神経を遣っている国境では、ゴミは強制的に没収されると思った方がよい。木材は
   中にカミキリ虫等が入っていることがある。米国等では中国から輸入した物に潜んでいたこの虫で
   大被害を被り、二輪車の梱包材でも禁止になった。
   

  oホコリにまみれていると手をつけたがらず、検査時間は短い、という傾向がある。このため執拗な
   検査を長時間やられ、車内を全部ひっくり返されないように、国境前で車内をわざと乱雑・不衛生
   にすることも旅行術の一つ。

  o料理用の白い化学調味料は、「麻薬?」と疑われた。

  o強盗退治用の唐辛子スプレーを指摘されて、説明に窮した人がいる。襲いかかってくる獰猛な牧畜
   犬等には効果的なのだが。

  o通常は、税関で物をねだられてもやらない。だが、ある理由で税関検査を早く済ませたかった国境
   では、即席麺をおとりにわざと「これはうまくて栄養価も高いので、宇宙飛行士も食べている」と
   誘ったら、予想通り「一つくれ」ときたので、内緒でさしあげ、すんなり通過できた。タバコをせ
   がまれるケースは多い。賄賂が常識の国では---郷に入っては郷に従うのも旅行術の一つかも。

  o見知らぬ人からものを預かって通関しないこと。麻薬が入っていれば即刑務所か死刑(マレーシア)
   である。(2005年末、麻薬を所持して通関し刑務所に入っている日本人は88人)

 ○お金の検査

  oほとんどの国は申告しなくてよい。

  o一定以上の所持金は申告しなければならない国は、それに従う。しかし、いったん申告すれば、出
   国時に両替実績証拠資料と残金を再申告しなければならないことがあるので面倒である。そこで、
   多くの人は、一定以下の所持金しか所持していないという理由で、申告しない。一定以上の金は隠
   すことになる。車には工具を使用しなければ開けられない秘密の隠し場所をつくり、ここに保管す
   ればかなり安全である。強盗対策にも効果的である。

  o両替は@厳密に公的機関のみ、A自由、B実態として自由、までいろいろな国があり、出国時には
   公的機関のみの両替証拠書類を提示しなければならない国があるので、入出時の申告時は十分留意
   すること。入国時にすべての所持金の申告を義務付けているときは、出国時の申告・両替証拠書類・
   残金等の検査を考えてするとよい。

 ○入出国時に使用する主な言葉

          上段は英語                       記入例(スペイン語圏も英語表記で可)

          下段はスペイン語

  姓      Family Name              YAMADA(山田)              

         Apellido     

  名           First(Given) Name                     TARO(太郎)

                 Nombre       

  姓名     Name and Surname                      TARO YAMADA(山田太郎)

                 Nombre Completo

  生年月日     Birth Date(Date of Birth)             JAN 1.1990(または 1 JAN.1990)

                 Fecha de Nacimiento       

  出生地    Birth Place(Place of Birth)           TOKYO(東京)

         Lugar de Nacimiento      

  国籍         Nationality(Country of Citizenship)   JAPAN(日本)

                 Nacionalidad                 JAPONES(日本)

  性別     Sex                                   MALE(女はFEMALE)                                      
                 Sexo                                  HOMBRE かMASCULINO(女はMUJERかFEMENINO)

  職業         Occupation                            STUDENT(学生)

                 Ocupacion                  ESTUDIANTE(学生)

  本籍         Permanent Address                     1-1 TIYODA KITA-KU TOKYO,JAPAN

                 Domicilio Legal       

  居住地       Country Where You Live または         1-1 TIYODA KITA-KU TOKYO,JAPAN
         Present Address in Full 

                 Domicilio または                     1-1 TIYODA KITA-KU TOKYO,JAPON
         Direccion Completa Donde Reside
                          
  旅券番号     Passport Number                       WG1008250(例)

                 Numero de Pasaporte                  

  同発給国    Country of Issue                      JAPAN(日本)

         Pais Que lo Expide                    JAPON(日本) 

  同発給機関  Issuing Authority                     MINISTRY OF FORREIGN AFFAIRS             
                 Autorida des Emisoras                 MINISTRO DE CANCILLER

  同発行日    Date of Issued                        1 DEC.2006(またはDEC 1.2006)

         Fecha de Emision     

    同有効期限   Date of Expired                       1 DEC.2016(またはDEC 1.2016)

                 Fecha de Vencimiento(またはValido)                  

  ビザ発行地   City Where Viza Issued                TOKYO(東京)
   
                 Lugar de Expedicion                 

  旅行目的     Reason of Trip                        SIGHTSEEING(観光)

                 Motivo del Viaje                      TURISMO(観光)

  航空機便名   Airline and Number                    JAL777(例)

                 Numero del Vuelo         
                          
  搭乗地       City Where You Boarded                NARITA(成田) 

                 Lugar de Embarque

  滞在中の住所 Address While in This Country         1-1 SANTA GILROY CA-95020(例)

                 Direccion en Panama(例)                 

  署名     Signature                             山田太郎

         Filma del Solicitante

  日付       Date                                  30 DEC.2006(またはDEC 30.2006)

                 Fecha

  結婚の有無  Marriage

          Estado Civil

    既婚     Married     

            Casado

    未婚         Unmarried(またはSingle)         

                 Soltero

■通過後

 ○入国後は両替、道路・主要都市地図を確保し、国境係員にその国・時期特有の注意事項や観光スポッ
  トをきくとよい。

 ○噴霧器を持ったニセの消毒屋が消毒料「10米ドルでいい」と寄ってくるが、単なるインチキ商売屋。
  モロッコのタンヘル港やセウタ港にいるインチキ税関手続支援屋等、発途上国の国境には種々のイン
  チキ商人がいるので要注意。

 ○国境はヒッチハイカーがたむろしていて無賃乗車を求めてくることがある。気に入ればいいが、注意
  も必要である。私は旧ユーゴスラビアで土地の人を乗せてトランジスターラジオを、エチオピア入国
  後は同じく旧ユーゴ人を乗せ、サングラスを盗まれた。

■カルネの期限切れ後に帰国

  車と共に帰国時、カルネの有効期限が切れているときは、車を持ち出したというカルネ等の証拠書類
 があれば税関はパスできる。

■車検の有効期限が切れた後に帰国

  車検を受けて合格しないと走行できないので、車は入国地点から車検業者等に預けるしかない。

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